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展示会集客の課題と現状
展示会への出展。多くの企業にとって、それは新規顧客獲得の絶好の機会です。しかし実際のところ、ブースに足を運ぶのは既存顧客ばかり。新規の見込み客が少なく、せっかく名刺を集めても積み上げるだけで終わってしまう。
こんな状況に心当たりはありませんか?展示会出展には多額の費用と人的リソースが投入されているにもかかわらず、成果が見えづらいというジレンマを抱える企業は少なくありません。特に製造業では、展示会が重要な営業チャネルであるにも関わらず、その効果を最大化できていないケースが目立ちます。

展示会出展の主な目的は「新規顧客の獲得」です。しかし、多くの企業では名刺獲得やその場だけの一次商談で終わってしまい、競合に比べて貴重な機会を失っているかもしれません。
DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の今、展示会の集客戦略も大きく変わりつつあります。従来の方法だけでは、もはや十分な成果を上げることは難しくなっています。
DX時代の展示会集客を成功させる3つの鍵
展示会の集客を飛躍的に向上させるためには、DX時代に適応した新しいアプローチが必要です。ここでは、展示会の集客を120%アップさせるための3つの重要な鍵を紹介します。
これらの戦略を適切に組み合わせることで、単なる名刺収集に終わらない、真の成果につながる展示会出展が実現できるのです。デジタルとリアルを融合させた新しい展示会マーケティングの世界を見ていきましょう。
1. デジタルとリアルの融合による事前集客の強化
展示会の成功は、当日の対応だけでなく、事前の集客活動にかかっています。DX時代においては、デジタルチャネルを活用した事前集客が極めて重要です。
まず取り組むべきは、展示会専用のランディングページ(LP)の作成です。このLPでは、展示会で紹介する製品・サービスの価値や、ブースを訪問するメリットを明確に伝えましょう。さらに、事前予約機能を設けることで、当日の訪問を促進できます。

SNSやメールマーケティングも効果的です。ターゲットを絞った広告配信や、既存顧客へのパーソナライズされた招待メールの送付により、関心度の高い見込み客を集めることができます。
東洋新薬マーケティング室の事例では、デジタルマーケティングを活用した事前集客により、目標達成率410%、過去最高の名刺獲得枚数を記録しています。このように、デジタルとリアルを適切に組み合わせることで、展示会の集客効果は飛躍的に高まるのです。
展示会の成功は、ブースデザインよりも事前の集客戦略で8割が決まる
また、事前にウェビナーやオンラインセミナーを開催することも効果的です。展示会のテーマに関連した内容で関心を引き、参加者に展示会ブースへの来場を促すことができます。
2. データ駆動型のブース運営と来場者体験の最適化
展示会当日のブース運営も、データを活用した戦略的なアプローチが求められます。来場者の行動データを収集・分析することで、より効果的な対応が可能になります。
例えば、QRコードやRFIDタグを活用した来場者の動線分析を行うことで、ブース内のどのエリアに人が集まりやすいかを把握できます。この情報をもとに、重要な製品展示や商談スペースの配置を最適化することが可能です。
また、来場者のデジタル名刺管理システムを導入することで、リアルタイムでの情報共有や、来場者の関心に合わせた対応が可能になります。これにより、従来の紙の名刺交換よりも効率的かつパーソナライズされた対応ができるようになります。
さらに、インタラクティブなデジタルコンテンツ(タッチスクリーン、AR/VR体験など)を提供することで、来場者の滞在時間を延ばし、より深い製品理解を促進することができます。
あなたは来場者にとって魅力的な体験を提供できていますか?
3. 展示会後のフォローアップとナーチャリングの自動化
展示会の真の価値は、イベント後のフォローアップにあります。多くの企業が見落としがちなのが、この展示会後の継続的なコミュニケーションです。
DX時代においては、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用したフォローアップの自動化が効果的です。展示会で獲得した見込み客のデータをMAツールに取り込み、興味関心に応じたコンテンツを自動配信することで、継続的な関係構築が可能になります。
プライズ株式会社の事例では、セカツクという展示会営業代行サービスを活用したフォローアップにより、展示会からの商談化率が3倍になったと報告されています。このように、適切なフォローアップ戦略が展示会投資の回収率を大きく左右するのです。
具体的なフォローアップの手法としては、以下のようなものが効果的です:
- 展示会後24時間以内のお礼メール送信
- 1週間以内の電話フォローアップ
- 関心領域に応じたカスタマイズされたコンテンツの定期配信
- オンラインデモやウェビナーへの招待
- ソーシャルメディアでのエンゲージメント
これらのフォローアップを体系的に実施することで、展示会で獲得した見込み客を効率的に商談や成約へと導くことができます。
展示会集客を最大化するKPI設定と測定方法
展示会の成功を測るためには、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。ただ漠然と「多くの人に来てほしい」と考えるのではなく、具体的な数値目標を設定することで、効果的な戦略立案と結果の評価が可能になります。
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、プロジェクトやビジネス上の目的に対する達成度を計測・評価するために用いられる定量的な数値指標のことです。展示会においては、最終的なKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)を達成するための中間指標として機能します。
展示会成功のための5つの重要KPI
展示会の集客と成果を最大化するためには、以下の5つのKPIを設定し、測定することが重要です。

まず第一に、「ブース来場者数」です。これは最も基本的な指標ですが、単純な通過人数ではなく、実際にブースで立ち止まり、何らかのインタラクションがあった人数を測定することが重要です。QRコードスキャンやデジタルチェックインシステムを活用することで、正確な来場者数を把握できます。
次に「名刺獲得数」です。これは従来から重視されてきた指標ですが、単なる数だけでなく、ターゲット企業や決裁権を持つ役職者からの名刺獲得数など、質も考慮した指標設定が効果的です。
三つ目は「商談設定数」です。展示会その場での商談だけでなく、展示会後に設定された商談の数も含めて測定します。これにより、展示会の短期的な成果を評価できます。
四つ目は「リード獲得コスト(Cost Per Lead)」です。展示会の総コスト(ブース出展料、人件費、制作費など)を獲得したリード数で割ることで算出します。この指標により、展示会投資の効率性を評価できます。
最後に「ROI(投資収益率)」です。展示会を通じて獲得した商談から発生した売上から展示会の総コストを差し引き、総コストで割ることで算出します。これは最終的な展示会の成功を測る重要な指標となります。
あなたの展示会戦略には、これらのKPIが組み込まれていますか?
デジタルツールを活用したKPI測定の実践方法
DX時代においては、上記のKPIを効率的に測定するためのデジタルツールが数多く存在します。これらを活用することで、より正確かつリアルタイムな測定が可能になります。
例えば、CRMシステムと連携したQRコードスキャンアプリを使用することで、来場者データをリアルタイムで収集し、既存の顧客データベースと統合することができます。これにより、展示会後のフォローアップもスムーズに行えるようになります。
また、マーケティングオートメーションツールを活用することで、展示会前の集客活動から展示会後のフォローアップまで、一貫した測定と分析が可能になります。どのチャネルからの集客が最も効果的だったか、どのようなコンテンツに反応が良かったかなど、詳細な分析ができます。
さらに、ビジネスインテリジェンスツールを使用することで、複数の展示会データを横断的に分析し、長期的なトレンドや改善点を把握することができます。これにより、展示会戦略の継続的な最適化が可能になります。
私が過去に支援した製造業のクライアントは、こうしたデジタルツールを導入することで、展示会のROIを前年比で40%向上させることに成功しました。データに基づいた意思決定が、展示会成功の鍵となるのです。
成功事例から学ぶ展示会×DX戦略
理論だけでなく、実際の成功事例から学ぶことも重要です。ここでは、DXを活用して展示会の集客と成果を飛躍的に向上させた企業の事例を紹介します。
これらの事例から、自社の展示会戦略に応用できるポイントを見つけてみてください。業界や規模は異なっても、DXを活用した展示会戦略の本質は共通しています。
事例1:株式会社東洋新薬の展示会DX戦略
機能性表示食品や健康食品、化粧品・医薬部外品の企画提案、製造受託を行う株式会社東洋新薬は、展示会プロモーション支援サービスを活用することで、目標達成率410%、過去最高の名刺獲得枚数を記録しました。

同社のマーケティング室担当者によると、コロナ禍においても新規見込み客との接点を作りたいという社内要望を受けて、外部の展示会営業代行サービスを活用したとのこと。これまでは社内スタッフのみで対応していましたが、既存取引先との商談も多いため、新規見込み客の獲得と既存顧客のフォローを両立させるための戦略的判断でした。
具体的には、以下の施策を実施しています:
- 展示会専用のトークスクリプト作成による商談の質向上
- デジタル名刺管理システムの導入による情報共有の効率化
- オンライン商談の仕組み構築による展示会後のフォロー強化
- ターゲットを絞ったデジタル広告による事前集客
この事例から学べるポイントは、自社の強みである「製品知識」と外部サービスの強みである「新規顧客開拓ノウハウ」を組み合わせることで、相乗効果を生み出せるということです。また、デジタルツールを活用することで、コロナ禍という制約のある環境下でも高い成果を上げられることが示されています。
事例2:プライズ株式会社のリード獲得戦略
テレワーク時代のリアルタイム情報共有ツール「flouu」を開発・販売するプライズ株式会社は、展示会プロモーション支援サービスを活用することで、展示会からの商談化率を3倍に向上させることに成功しました。
同社の内田CEOによると、テック系のスタートアップとして、プロダクト開発に時間を割きつつ効率的にリードを獲得するために、展示会での名刺獲得からその後のリードフォローまでを一気通貫で対応できるサービスを求めていたとのこと。
2年前の出展時は自社で全て対応し、アルバイトを雇ってチラシを配り、自分たちでフォローコールも実施していましたが、フォローコールの時間確保や電話でのコミュニケーション技術の不足により、満足のいく結果が得られませんでした。
外部サービスを活用した結果、1回の出展ごとに数十件の商談を獲得できるようになり、営業事務との連携により半自動で商談が入る体制を構築。CEOが商談に集中できる環境を作り出すことに成功しています。
この事例から学べる重要なポイントは、自社のコアコンピタンス(この場合はプロダクト開発)に集中し、それ以外の部分は専門家に任せるという戦略の有効性です。また、展示会後のフォローアップを体系化・自動化することの重要性も示されています。
どちらの事例からも、展示会をただの名刺収集の場ではなく、効率的な商談創出のプラットフォームとして活用するためには、デジタル技術の活用と専門的なノウハウの導入が不可欠であることがわかります。
展示会×営業DXの具体的な実践ステップ
これまでの内容を踏まえ、ここでは展示会と営業DXを組み合わせた具体的な実践ステップを紹介します。これらのステップを自社の状況に合わせてカスタマイズし、段階的に導入していくことで、展示会の集客と成果を飛躍的に向上させることができるでしょう。
展示会と営業DXの統合は一朝一夕にはできません。しかし、以下のステップを着実に実行していくことで、確実な成果につなげることができます。
ステップ1:展示会前の準備と集客戦略
展示会の成功は、事前の準備と集客活動にかかっています。以下の施策を実施しましょう:

まず、展示会の目的と目標を明確に設定します。「名刺〇〇枚獲得」「商談〇〇件設定」など、具体的な数値目標を立てることが重要です。この目標に基づいて、必要な予算と人員を割り当てます。
次に、ターゲットとなる来場者像を具体的に定義します。業種、職種、役職、課題など、詳細なペルソナを設定することで、効果的なメッセージングが可能になります。
そして、展示会専用のランディングページを作成します。このページでは、展示会で紹介する製品・サービスの価値や、ブースを訪問するメリットを明確に伝えましょう。また、事前アポイント予約機能を設けることで、当日の訪問を促進できます。
デジタル広告を活用した集客も効果的です。LinkedInやFacebookなどのSNS広告、Google広告、リターゲティング広告などを組み合わせて、ターゲットに効率的にリーチしましょう。また、既存顧客や過去の展示会来場者へのパーソナライズされたメール配信も忘れずに行います。
さらに、事前のウェビナーやオンラインセミナーを開催することで、展示会への関心を高めることができます。これらのデジタルイベントの参加者は、展示会ブースへの来場確率が高いため、効果的な集客手段となります。
ステップ2:展示会当日のデジタル活用術
展示会当日は、デジタルツールを活用して来場者体験を最適化し、効率的な情報収集を行いましょう:
まず、デジタル名刺管理システムを導入します。QRコードスキャンやタブレット入力などで、来場者情報をリアルタイムで収集・共有できるようにしましょう。これにより、紙の名刺の紛失や入力ミスを防ぎ、展示会後のフォローアップもスムーズになります。
次に、来場者の関心に合わせたデジタルコンテンツを準備します。タブレットやタッチスクリーンを活用して、製品デモやケーススタディなどを効果的に紹介できるようにしましょう。また、AR/VRを活用した体験型コンテンツも、来場者の印象に残りやすいです。
ソーシャルメディアでのリアルタイム発信も効果的です。展示会の様子や特別イベントの情報をSNSで発信することで、まだブースに来ていない来場者の関心を引くことができます。ハッシュタグを活用して、展示会全体の盛り上がりに貢献することも重要です。
また、来場者の行動データを収集・分析するシステムを導入することで、ブース内のどのエリアに人が集まりやすいか、どの展示物に関心が高いかなどを把握できます。これらの情報をもとに、展示会中でもブースレイアウトや説明内容を最適化することが可能です。
さらに、チャットボットやAIアシスタントを活用して、基本的な質問への対応を自動化することも検討しましょう。これにより、スタッフはより価値の高い商談や説明に集中することができます。
ステップ3:展示会後のフォローアップとナーチャリング
展示会の真の価値を引き出すのは、イベント後のフォローアップです。以下の施策を実施しましょう:
まず、展示会終了後24時間以内にお礼メールを送信します。このメールでは、ブースへの来訪に対する感謝と、次のステップ(資料送付、デモ、商談など)の提案を含めましょう。マーケティングオートメーションツールを活用することで、パーソナライズされたメールを効率的に送信できます。
次に、獲得したリードを関心度や購買意欲に基づいてセグメント化します。「ホットリード」「ウォームリード」「コールドリード」などに分類し、それぞれに適したフォローアップ戦略を実施しましょう。
ホットリードには、1週間以内に電話でのフォローアップを行い、具体的な商談日程を設定します。ウォームリードには、関連する有益なコンテンツ(ホワイトペーパー、ケーススタディなど)を定期的に送付し、関係構築を進めます。コールドリードには、ニュースレターなどの一般的な情報提供を継続し、将来的な機会につなげます。
また、オンラインデモやウェビナーを開催することで、複数のリードに同時にアプローチすることも効果的です。展示会で関心を示した製品・サービスに関する詳細情報を提供することで、購買意欲を高めることができます。
さらに、CRMシステムを活用して、フォローアップの進捗状況を管理・可視化しましょう。どのリードがどの段階にあるか、次のアクションは何かを明確にすることで、効率的なフォローアップが可能になります。
これらのステップを体系的に実施することで、展示会で獲得したリードを効率的に商談や成約へと導くことができます。デジタルツールを活用することで、フォローアップの自動化と最適化が可能になり、展示会投資の回収率を最大化できるのです。
まとめ:DX時代の展示会集客成功への道筋
本記事では、DX時代における展示会の集客を120%アップさせるための戦略と具体的な実践方法について解説してきました。ここで重要なポイントを整理しておきましょう。
まず、展示会の目的は「新規顧客の獲得」であり、単なる名刺収集や一次商談で終わらせないことが重要です。そのためには、デジタルとリアルを融合させた総合的な戦略が必要となります。
具体的には、以下の3つの鍵が重要です:
- デジタルとリアルの融合による事前集客の強化
- データ駆動型のブース運営と来場者体験の最適化
- 展示会後のフォローアップとナーチャリングの自動化
これらを実現するためには、適切なKPIの設定と測定が不可欠です。ブース来場者数、名刺獲得数、商談設定数、リード獲得コスト、ROIなどの指標を活用して、展示会の成果を定量的に評価しましょう。
また、成功事例から学ぶことも重要です。株式会社東洋新薬やプライズ株式会社の事例のように、自社の強みと外部サービスの強みを組み合わせることで、展示会の成果を飛躍的に向上させることができます。
最後に、展示会×営業DXの具体的な実践ステップとして、展示会前の準備と集客戦略、展示会当日のデジタル活用術、展示会後のフォローアップとナーチャリングの3ステップを紹介しました。これらを自社の状況に合わせてカスタマイズし、段階的に導入していくことが成功への道筋となります。
展示会は、DX時代においても重要なマーケティングチャネルであり続けます。しかし、その活用方法は大きく変化しています。デジタル技術を活用し、データに基づいた戦略的なアプローチを取ることで、展示会の集客と成果を最大化することができるのです。
あなたの次の展示会が大成功となるよう、本記事で紹介した戦略と実践方法を是非活用してみてください。展示会の名刺獲得で終わらせず、確度の高い商談機会を創出し、投資対効果を最大化しましょう。
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